ADRを使わない米国上場。LogProstyleのNYSE American直接上場が示した新たな選択肢
以前のコラムで、外国企業が米国市場に上場する際の代表的な手法としてADR(米国預託証券)をご紹介しました。SKハイニックスをはじめ、米国市場に上場する外国企業の多くがADRを利用しています。ところが2025年3月、この「常識」に一石を投じる事例が日本から生まれました。株式会社LogProstyle(ティッカー:LGPS)による、NYSE Americanへの普通株式での直接上場です。
何が新しかったのか
LogProstyleは、不動産開発やホテル運営を手がける東京の企業です。同社は2025年3月25日、日本の未上場企業として初めて、ADRを介さずに普通株式をそのままNYSE Americanに上場させました。公開価格は1株5ドル、200万株の公募で約1,000万ドルを調達しています。日本企業のNYSE American上場自体が初であることに加え、「ADRなしの直接上場」という構造面でも前例のない案件でした。
ADR上場と直接上場の比較
| 項目 | ADR上場 | 普通株式の直接上場 |
| 上場する証券 | 預託銀行が発行する預託証券 | 発行体の普通株式そのもの |
| 預託銀行 | 必要(手数料が発生) | 不要 |
| 株主構成 | 原株主とADR保有者の二層構造 | 単一の株主構成 |
| 議決権行使 | 預託銀行経由で間接的 | 株主が直接行使 |
| 主な利用場面 | 母国市場に上場済みの企業の追加上場 | 米国市場を主戦場とする上場 |
| 日本企業の事例 | トヨタ、ソニー、武田など多数 | LogProstyle(2025年、初事例) |
直接上場のメリットと留意点
直接上場の利点は、構造のシンプルさに集約されます。預託銀行への手数料や事務の複雑性を排除でき、株主構成が単純になり、議決権も株主が直接行使できます。米国市場だけに上場する(母国では未上場の)企業にとっては、あえてADRという中間構造を挟む必然性は、実はそれほど大きくありません。
一方で、日本の株式会社の普通株式を米国の取引所・決済インフラにそのまま載せるには、株式の決済実務、名義管理、取引所側の受け入れ態勢など、ADRであれば預託銀行が吸収してくれる論点を、発行体と関係者が自ら解決する必要があります。LogProstyleの案件が「初」であったのは、まさにこの部分に前例がなかったからです。
先例ができた、ということの意味
重要なのは、この上場によって「日本のKK(株式会社)が普通株式のまま米国主要市場に直接上場できる」ことが実務として証明された点です。今後、日本のスタートアップや中堅企業が米国上場を検討する際、「ナスダック(Nasdaq)かNYSEか」だけでなく、「ADRか直接上場か」という構造の選択肢も現実のものになりました。選択肢が増えるということは、それだけ設計の巧拙が結果を左右するということでもあります。
SMASH & Partnersでは、米国上場の支援をしております。米国市場の準備をしているけど停滞している、思うように進まない、監査対応に苦労しているなど、お気軽にお問い合わせください。。
お問合せ先:smash-partners@smash-international.com
執筆者:森 大輔(公認会計士・公認不正検査士)
