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ナスダック(Nasdaq)上場:整理すべき関連当事者開示

ナスダック(Nasdaq)上場を目指す日本企業の多くは、米国市場での事業展開やIR活動の拠点として、米国に子会社を設立します。この米国子会社の設立自体は事業戦略上自然な選択ですが、上場準備の観点では、グループ内取引や資本関係の整理を怠ると、F-1や20-Fでの「関連当事者取引(Related Party Transactions)」開示に思わぬ負担が生じることがあります。今回は、この論点を整理します。

※F-1や20-Fは下記のコラムで解説しています。

【ナスダック上場】Form F-1とは何か──日本企業がつまずきやすいポイント | NASDAQ上場・ガバナンス・監査を支援する会計アドバイザリー | SMASH & Partners 合同会社

米国ナスダック上場の継続開示義務:20Fと6-K | NASDAQ上場・ガバナンス・監査を支援する会計アドバイザリー | SMASH & Partners 合同会社

SEC(米国証券取引委員会)の開示規則では、会社と経営陣、主要株主、あるいはこれらの近親者・関係会社との間で行われた取引について、一定の基準を超えるものは「関連当事者取引」として開示が義務付けられています。日本の親会社と米国子会社の間で行われる業務委託費、ロイヤリティの支払い、資金の貸し借り、役務提供などは、グループ内取引である以上、この関連当事者取引の枠組みで精査される対象になります。

日本企業の実務でよく見られる課題は、グループ内の取引条件が「独立第三者間取引(Arm’s Length)」の水準で設定されていないケースです。たとえば親会社が米国子会社に対して市場価格より割安に技術ライセンスを提供している、あるいは親会社が米国子会社の費用を立て替えたまま長期間清算していない、といった取引慣行は、日本国内ではさほど問題視されなくても、SECの目線では「取引条件の妥当性」や「独立性」の観点から説明を求められる典型的な論点です。

また、米国子会社の設立形態(LLC、C-Corporationなど)や出資比率、役員の兼任関係も整理が必要です。親会社の役員が米国子会社の役員を兼任している場合、その役員報酬の配分方法や、兼任によって生じる利益相反の可能性についても開示・説明が求められることがあります。特にFPI(外国民間発行体)の認定要件である「経営の主たる拠点が米国内にない」という条件との整合性も含め、グループ全体のガバナンス構造を上場準備の早い段階で点検しておくことが望ましいです。

実務的な対応としては、まずグループ内取引の契約書を整備し、取引条件が独立第三者間取引の水準にあることを示せる根拠(移転価格文書、市場価格の比較データなど)を準備することが基本になります。さらに、関連当事者取引を継続的に把握・記録する社内プロセス(取引台帳の整備、四半期ごとのレビュー体制など)を構築しておくと、F-1作成時だけでなく、上場後の20-Fでの毎年の開示対応も格段に楽になります。

グループ内取引の整理は、税務(移転価格)・会計(関連当事者開示)・ガバナンス(利益相反管理)が交差する領域であり、専門家による横断的なチェックが効果を発揮しやすい分野です。

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