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海外事業の内部統制監査は監査役?それとも内部監査員がやるの?

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2024年07月14日 | Column

ご無沙汰しております。もうそろそろ梅雨明けでしょうか。これ以上暑くならないことを祈るばかりです。

 さて、これまで海外事業監査について色々とコラムを書いてきました。ここでは海外事業の内部統制監査について説明します。

 海外事業監査と聞くと監査法人・公認会計士による財務諸表監査の一環としての監査、監査役による海外監査、内部監査部による海外拠点の監査、あたりが一般的に思い浮かべるものと思います。“内部統制”という視点で法律的側面から2つ、海外事業監査を誰が行うかについて解説します。

 まず会社法という観点から。会社法では、大会社である取締役会設置会社は取締役会が内部統制の基本方針として会社法施行規則所定の事項について決議しなければならないとしています。当該事項において、企業集団の内部統制も含まれることとされており、当然海外子会社も会社法が定める内部統制の基本方針の範囲に含まれてきます。こうしてみると、大会社においてはグローバルな観点でリスク管理体制やコンプライアンス体制の整備を義務付けられているということになります。また、監査役が行う監査の対象に会社が作成する事業報告が含まれるが、当該事業報告では“内部統制の基本方針に係る取締役会決議”が含まれており、監査役は海外子会社も対象にしてグループ内部統制についても監査する義務があると言えます。

 次に金融商品取引法という観点から。金融商品取引法では、「財務報告の適正性を確保するための内部統制」につき、上場会社等に内部統制報告書の提出と同報告書への独立監査人による監査証明を受けることの2点を義務付けています。当該内部統制はJ-SOXと世間ではいわれており、J-SOXが要求する内部統制は、上述した会社法の要求する内部統制の各論的一部であり、その部分を含めて監査役は監査をする義務を負っているといえます。

 J-SOXの内部統制は会計不正とくに粉飾決算を防止するための体制が柱になります。不正や潜在的に不正となり得る事案・取引をいかに早期に防止発見できる体制ができているかを監査することが肝要です。

 グループ会社・連結レベルで起きる会計不正として例えば、少し前ですと海外子会社を使った損失「飛ばし」、最近では海外子会社で業績不振による資産の減損隠しなど、がありあす。こういった会計不正は親会社と海外子会社の経営幹部が関与し、親会社から海外子会社へと不当な圧力がかけられて行われることが多いです。そのため、親会社と海外子会社の双方を対象にして、監査役が「監査」する必要性が生じてきます。内部監査部門ではだめなのか?との声もありますが、たしかに内部監査でも海外子会社の監査は効果を発揮しますが、上述の通り、海外子会社の不正会計は経営幹部の関与が往々にしてあり、経営幹部を上司に持つ内部監査員では役不足(自分の上司を監査するようなものであるため)となることも否めません。

以上、海外事業監査をする上で参考になれば幸いです。