ナスダック上場は「維持基準」で見落としがち。継続上場基準の3つの柱を解説
ナスダック (Nasdsq) 上場というと、上場審査(IPOプロセス)そのものへの関心が集まりがちです。しかし、上場後に継続して満たすべき「Continued Listing Requirements(上場維持基準)」への理解も、同じくらい重要だとご存知でしょうか。上場はゴールではなく、維持基準を割り込めば上場廃止(デリスティング)のリスクに直面することになります。実際、業績悪化や株価下落をきっかけに、上場から数年後に維持基準への抵触が問題化するケースは決して珍しくありません。
財務基準・株価基準・ガバナンス基準の3本柱
ナスダックの上場維持基準は、主に「財務基準」「株価基準」「コーポレートガバナンス基準」の3つで構成されます。財務基準では、株主資本額や時価総額、流動株式数など、上場するティア(Global Select、Global Market、Capital Market)ごとに異なる最低水準が設けられています。どのティアで上場するかによって求められる水準が変わるため、上場準備の段階でどのティアを目指すのかを見極めておくことも重要です。
株価基準では、最低入札価格(Minimum Bid Price)として1株1ドルを一定期間下回らないことが求められます。これを下回ると是正期間(通常180日、延長で最大360日)が与えられ、この間に株価を回復させるか、株式併合(リバース・スプリット)などの是正措置を取る必要があります。株価基準は業績とは別に、市況要因だけで抵触することもあるため、油断できないポイントです。
ガバナンス基準とFPI特例
ガバナンス基準では、取締役会の過半数を独立取締役とすること、監査委員会・報酬委員会の設置と独立性の確保などが求められます。外国民間発行体(FPI)には母国基準の適用を選択できる特例(Foreign Private Issuer Exemption)がありますが、この特例を利用する場合も、その旨をナスダックに開示する義務がある点には注意が必要です。特例を使えばすべてのガバナンス基準が免除されるわけではなく、監査委員会に関する要件など、特例の対象外となる項目も存在します。
抵触が判明したときの対応フロー
見落とされがちなのは、これらの基準は上場後も継続的にモニタリングが必要で、株価下落や自己資本の毀損などによって、突然基準を下回るケースがあるという点です。基準抵触が判明すると、ナスダックから通知(Deficiency Letter)が届き、一定期間内に是正計画(Compliance Plan)を提出することが求められます。この対応が不十分だと、上場廃止に向けた聴聞手続きに移行するため、社内に早期警戒の仕組みと、対応フローを整理した体制をあらかじめ用意しておくことが望まれます。
ナスダック上場を目指す企業は、上場審査対応と同じ熱量で、上場後の維持基準管理体制も準備段階から設計しておくべきでしょう。
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執筆者:森 大輔(公認会計士・公認不正検査士)
