日本企業のNasdaq上場23件を検証 — 公開価格比中央値▲76%が示す「上場後」の課題
数字で見る6年間
2020年のMediromを起点に、日本企業(日本発の米国持株会社を含む)の米国上場は2026年8月までに23件が完了しました。第三者データベース(JP Nasdaq Tracker、暫定値)によれば、調達総額は約$226M、1件あたり平均約$10M。年別では2023年の約$80Mが最大で、「上場ラッシュ」と呼ばれた年です。
取引が続いている18銘柄の株価は、公開価格比の中央値で▲76%、平均で▲57%(株式併合調整後)。公開価格を上回っているのは2銘柄だけです。5社は上場廃止となり、2026年9月時点で8社が申請中です。
なぜ下がるのか
下落は個社の問題というより構造の問題です。第一に、調達額$4〜10Mの案件でも、引受手数料(7〜8.5%)、PCAOB登録監査法人の監査、米国・日本の弁護士費用といった固定費は変わりません。手取りベースの資本コストは大型案件の倍以上になります。
第二に、公開株式が少なく流動性が乏しい案件では、上場直後の売り圧力が株価に大きく反映されやすくなります。株価が$1を割ると株式併合で株価基準への対応を図り、その後の追加調達で希薄化が進む例もあります。2026年1月にはNasdaqの新規上場時の公開株式時価総額要件が$15Mへ引き上げられるなど、小型・低流動性IPOへの審査・基準は厳格化しています。
上回った銘柄に共通するもの
一方で、公開価格を上回っているPicoCELAは、上場後12か月以内にフォローオン調達を実現し、継続的に資本市場へアクセスする流れを作りました。上場前の事業計画とバリュエーションの整合、上場後のIRと追加調達の設計が「上場後」の差を生んでいます。
会計士の視点で見た成功条件
実績が示しているのは、上場の可否より「上場後の1〜2年」を設計できているかが結果を分けるということです。具体的には、①IPO時の調達額と固定費の比率、②上場後の20-F・6-K体制と内部統制(多くの日系案件がICFRの重要な欠陥を開示しています)、③追加調達の前提となる財務諸表の鮮度管理、④継続上場基準(株価$1、時価総額)に対するモニタリング体制です。
通信簿の数字は厳しいものですが、失敗の型が明確になったことは、これから準備する企業にとって最良の教材でもあります。
FPI企業への適用・影響
【発行体区分で異なる】FPIなら上場後の継続開示は原則Form 20-F/6-K、米国国内発行体ならForm 10-K/10-Q/8-Kが中心です。日系上場案件を比較するときは、株価だけでなく「どの発行体区分で上場したか」も分けて見る必要があります。
参考:JP Nasdaq Tracker(nasdaqipos.jp、2026年9月時点・暫定値)、各社SEC提出書類、Spirit Advisors(PicoCELA事例)
※本稿の数値は第三者データベースの暫定値に基づきます。個別企業については各社のSEC提出書類をご確認ください。
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SMASH & Partnersでは、IPO時の調達額と上場維持コストの試算、上場後の20-F・6-K体制の構築支援をはじめ、米国NASDAQ・NYSE上場に伴う監査対応支援・上場支援、米国OTC市場(OTCQX・OTCQB)への上場支援、ガバナンス・監査に関するご相談を承っております。非上場並びに上場会社・上場準備中の企業・外資系企業・海外拠点を持つ企業のご担当者様、米国市場への上場に関するご相談はお気軽にどうぞ。
執筆者:森 大輔(公認会計士・公認不正検査士)
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