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【米国上場実務】Cheap Stockとは?上場前ストックオプションがSECコメントと費用計上を招く理由

SEC審査で頻繁に論点になる質問

米国上場の登録届出書を提出した企業では、上場前に発行した株式・ストックオプションの公正価値とIPO想定価格との差異について説明を求められることがあります。特に上場前12〜24か月の付与・発行はSECコメントの対象になりやすく、これが一般にCheap Stock(チープ・ストック)問題と呼ばれます。

上場直前に、IPO価格より大幅に安い価格で株式やオプションを発行していた場合、SECは「発行時点の公正価値の見積りが低すぎたのではないか」と疑います。見積りが低すぎたと判断されれば、差額分の株式報酬費用(US GAAPではASC 718、IFRSではIFRS 2)を追加で計上することになり、上場直前期の損益が大きく悪化します。修正が過年度に及べば、監査済財務諸表の再表示が必要になることもあります。

日本企業が特にはまりやすい理由

日本企業には、この問題を大きくする固有の事情があります。

  • 税制適格ストックオプションの行使価格は、非上場企業では純資産ベース等の税務上の評価額で設定されることが多く、IPO価格との乖離が大きくなりやすい
  • 日本基準では非公開企業のストックオプションを「本源的価値」で評価できるため、付与時に費用がほとんど計上されていない。US GAAP/IFRSへの組替えで初めて公正価値評価が必要になり、まとまった費用が「発見」される
  • 信託型ストックオプションや従業員持株会など、日本独自のスキームは米国の評価実務に当てはめにくい

対策は「その時点の評価を残すこと」

SECへの回答で求められるのは、付与時点ごとの評価が合理的だったことの証明です。具体的には、①付与時点で独立した評価者による同時評価(contemporaneous valuation)を取得する、②評価手法(OPM、PWERM等)、非流動性ディスカウント、類似会社の選定根拠を文書化する、③IPO価格に至るまでの価値の変化を、事業の進捗や市場環境と結び付けて説明できるブリッジ分析を用意する、の3点です。

上場が視野に入った段階でまとめてオプションを付与するのは、最も費用化リスクが高い行動です。付与のタイミングと評価の記録を、上場準備の初期から会計・監査の論点として管理することをお勧めします。

FPI企業への適用・影響

【直接適用】FPIのForm F-1でもCheap StockはSECコメントの重要論点になり得ます。会計処理は採用基準に応じ、US GAAPならASC 718、IFRS as issued by the IASBならIFRS 2を中心に検討します。

参考:ASC 718「Compensation—Stock Compensation」、IFRS 2「株式に基づく報酬」、AICPA「Valuation of Privately-Held-Company Equity Securities Issued as Compensation」、SEC「Financial Reporting Manual」Section 9520

上場前のストックオプションや株式発行の評価・費用計上への対応にお悩みがあれば、お気軽にSMASH & Partnersへお問い合わせください。

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執筆者:森 大輔(公認会計士・公認不正検査士)

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