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米国ナスダック上場の優遇措置、FPIとEGCの活用法【前編】

前回までS-1とF-1の違い、そしてIPOプロセスの全体像について解説しました。今回は、日本企業が米国上場時に活用できる「FPI(Foreign Private Issuer、外国民間発行体)」という優遇制度について見ていきます。

FPIとは、SECが米国外の企業に対して認定する特別なステータスです。一定の条件を満たす外国企業は、米国の国内発行体(Domestic Filer)よりも開示負担が軽い扱いを受けられます。これは、米国の制度に不慣れな外国企業が無理なく米国市場にアクセスできるよう設計された仕組みであり、日本企業にとっては積極的に活用すべき制度です。

FPIの認定を受けるための条件は大きく2つです。①米国人(米国居住者)が保有する株式が50%以下であること、②以下のいずれかに該当しないこと——役員・取締役の過半数が米国市民または米国居住者である、事業の主たる部分が米国内で行われている、資産の主たる部分が米国内にある、経営の主たる拠点が米国内にある。日本国内で事業を営み、経営陣も日本人中心という典型的な日本企業であれば、ほとんどの場合この条件を満たします。

FPI認定を受けると、具体的にどのような負担軽減があるのでしょうか。主なポイントは次のとおりです。

優遇措置内容
年次報告書の簡素化10-Kではなく20-Fを使用でき、提出期限も国内企業より緩やか
四半期報告の免除10-Qの提出義務がなく、6-K(臨時報告書)による開示で対応可能
役員報酬の総額開示個別開示は不要で、総額開示のみで済む(米国企業は個別開示が原則)
プロキシルールの非適用委任状勧誘規制の適用を受けない
インサイダー取引規制の一部免除Section 16の報告義務など一部規制が免除される
財務諸表組み替えの柔軟性「本国(日本)の会計基準やIFRSで作成した財務諸表の利用が認められる場合があり、特にIFRSであればUS GAAP(米国会計基準)への組み替えなしでそのまま提出することが可能です」とすると、より現在の実務に即した正確な案内になります。

特に役員報酬の個別開示免除は、日本企業の経営陣にとって心理的なハードルを下げる効果が大きいポイントです。米国企業のように経営幹部一人ひとりの報酬額が公開されることへの抵抗感は、日本企業のIPO検討段階でよく聞かれる懸念のひとつですが、FPIであればこれを回避できます。

ただし、FPIステータスは一度認定されれば永続するわけではありません。毎事業年度末に条件を満たしているかを再評価する必要があり、米国人株主の比率が50%を超えた場合などは、ステータスを失い国内発行体としての開示義務に切り替わります。上場後の株主構成の変化にも注意を払う必要がある制度です。

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