NYSEにも「市場区分」がある。NYSE本体とNYSE Americanの違いを徹底解説
東証にプライム・スタンダード・グロースという市場区分があるように、実はNYSE(ニューヨーク証券取引所)グループにも複数の市場区分があることをご存知でしょうか。2025年に日本企業のLogProstyleが上場した「NYSE American」もその一つです。「NYSEに上場」と一口に言っても、どの市場区分なのかによって、求められる基準も市場の性格も大きく異なります。今回は、日本ではあまり整理されて語られることのない、NYSEグループの市場区分を解説します。
NYSEグループの3つの市場
NYSEグループが運営する株式市場は、大きく3つに分かれます。
| 市場 | 位置づけ | 主な上場対象 | 東証で例えると |
| NYSE(本体・メインボード) | グループの旗艦市場 | 大型・成熟企業 | プライム市場 |
| NYSE American | 中小型株向け市場 | 小型・成長企業 | グロース市場 |
| NYSE Arca | 電子取引市場 | ETF・上場投資商品が中心 | (ETF市場に相当) |
このうち、事業会社の上場先として検討対象になるのは、NYSE本体とNYSE Americanの2つです。NYSE Arcaは主にETF(上場投資信託)の上場・取引に特化した電子市場であり、一般の事業会社が上場する市場ではありません。
NYSE Americanとは。旧AMEXの系譜を継ぐ中小型株市場
NYSE Americanの前身は、AMEX(アメリカン証券取引所)です。AMEXは、NYSEに上場できない新興・中小型企業の受け皿として100年以上の歴史を持つ取引所でしたが、2008年にNYSEグループ(当時のNYSEユーロネクスト)に買収され、名称変更を経て2017年から「NYSE American」となりました。
現在のNYSE Americanは、メインボードよりも緩やかな上場基準を持つ、小型・成長企業向けの市場です。時価総額や利益の要件がメインボードより大幅に低く設定されており、IPOで調達する金額も数百万〜数千万ドル規模の、いわゆるスモール・マイクロキャップ案件が中心です。米国では、バイオベンチャー、資源開発、新興テクノロジー企業などがこの市場を利用してきました。
NYSE本体とNYSE Americanの比較
| 比較項目 | NYSE(本体) | NYSE American |
| 前身・歴史 | 1792年起源の旗艦市場 | 旧AMEX(2017年に現名称へ) |
| 想定企業規模 | 大型・成熟企業 | 小型・成長企業 |
| 上場基準(財務) | 厳格 (利益テスト等の水準が高い) | 緩やか (複数の基準から選択可) |
| 株価要件の目安 | IPO時4ドル以上 | 基準により2〜4ドル程度から |
| 調達規模の傾向 | 数億ドル以上の大型案件も | 数百万〜数千万ドル規模が中心 |
| ブランドイメージ | 「NYSE上場企業」の重み | 米国市場への現実的な入口 |
| 日本企業の事例 | トヨタ、ソニー、武田など | LogProstyle (2025年、日本企業初) |
| ガバナンス要件 | SEC・SOX対応は共通 | SEC・SOX対応は共通 |
注意したいのは、上場基準は市場ごとに異なる一方で、SECへの登録、Form 20-F等の継続開示、PCAOB監査、SOX法対応といった米国上場企業としての規律は、どの市場区分でも共通だという点です。「NYSE Americanは基準が緩いから準備も楽」ということにはなりません。入口のハードルと、上場後に守るべき規律は別物です。
ナスダック(Nasdaq)のティアとの位置関係
米国上場を検討する日本企業の視点では、ナスダックの3ティアも含めた全体地図で捉えると分かりやすくなります。
大まかに言えば、大型企業のリーグが「NYSE本体・ナスダックGlobal Select」、中堅のリーグが「ナスダックGlobal Market」、そして新興・小型企業のリーグが「ナスダックCapital Market・NYSE American」という構図です。近年の日本のスタートアップの米国上場はナスダックCapital Marketに集中してきましたが、LogProstyleの上場により、同じリーグにNYSE Americanという選択肢が実在することが示されました。NYSEブランドへのこだわり、取引所側のサポート体制、上場料や審査の相性などを比較して選べる時代になったと言えます。
市場区分の選択は「入口の設計」
東証でプライムかグロースかを選ぶのと同じように、米国でもどの市場区分から入るかは戦略判断です。最初からメインボードを狙うのか、NYSE AmericanやナスダックCapital Marketから入り、成長に応じて上位市場への移行(アップリスティング)を目指すのか。自社の規模・調達計画・投資家層に照らした「入口の設計」が、上場後の資本政策の自由度を左右します。
SMASH & Partnersでは、米国市場であるNYSE及びナスダック(Nasdaq)への上場支援をしております。米国上場の検討を考えている、NYSEやNasdaqへの上場準備を始めたが行き詰っている・上手く進んでいないなど、米国上場に関するお悩みがあればお気軽にお問い合わせください。。
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執筆者:森 大輔(公認会計士・公認不正検査士)
