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Nasdaq上場基準を満たしても拒否される?「IM-5101-3」裁量審査と日本企業への影響

「数字を満たせば上場できる」時代の終わり

Nasdaqの上場基準といえば、株主資本や公開株式時価総額、株価といった定量基準が真っ先に思い浮かびます。2026年1月には公開株式時価総額の下限が$15Mに引き上げられ、当コラムでも取り上げました。しかし、それ以上に構造的な変化が同時期に起きています。2025年12月19日にSECが承認したNasdaq規則IM-5101-3です。

このルールは、上場申請者が定量・定性基準をすべて満たしていても、その証券が「相場操縦の対象になりやすい」あるいは「投資家や市場の秩序にリスクをもたらす」とNasdaqが判断した場合に、初回上場を拒否できる裁量権を明文化したものです。

何を見られるのか

考慮要素は例示であり限定列挙ではありませんが、規則には次のような項目が挙げられています。

  • 会社の所在地(米国株主が現地で法的救済を得られるか)
  • 株主構成・支配構造と、公開株式の分散状況
  • 監査人、引受会社、法律事務所、ブローカー等のアドバイザーに関する懸念
  • 同種の状況にある既上場企業で生じた問題

注目すべきは3点目です。会社そのものではなく「誰と組んでいるか」が審査対象になったことを意味します。

施行後に何が起きたか

2025年12月の施行直後から、小型IPOではNasdaqの審査遅延が相次ぎました。米国の証券法務ブログの集計では、小型IPOの件数は2025年第4四半期の23件から2026年第1四半期には5件へ急減しています。2026年5月には中国(香港・マカオ含む)拠点企業に$25Mの最低調達額を課す規則も承認され、Nasdaqが「小型・低流動性・特定地域」の案件を明確に絞り込みに来ていることが分かります。

日本企業への含意

日本はNasdaqが規則上念頭に置く「Restrictive Market(制限的市場)」の典型例には該当しません。ただし、IM-5101-3では所在地だけでなく、株主構成、公開株式の分散、経営陣・取締役会の米国公開会社経験、監査人・引受会社・法律事務所等のアドバイザー、類似案件の取引状況などを総合的に考慮できます。したがって、「過去の日系案件で使われた組み合わせだから大丈夫」という前例踏襲だけで体制を決めるのは避け、各アドバイザーの規制対応歴・実績・リソースを個別に確認することが重要です。

対応としては、①PCAOB検査報告書や処分歴を含めて監査法人の品質を確認する、②引受会社のFINRA登録・案件実績・販売体制を確認する、③公開株式の実質的な分散と流動性を検討する、④上場後の資本政策・IR・追加調達まで含めた計画を申請前から整える、といった準備が重要です。定量基準の充足は必要条件ですが、それだけで上場が保証されるわけではありません。

FPI企業への適用・影響

【直接適用】FPIであってもNasdaqの初回上場審査・IM-5101-3の対象です。FPIであること自体による免除はなく、上場主体・株主構成・公開株式の分散、監査人・引受会社等を含む審査対応が必要です。

参考:Nasdaq Listing Rule IM-5101-3、SEC承認命令(2025年12月19日)、Loeb & Loeb LLP「What Asia’s Market Initiatives and Nasdaq’s New Rules Mean for Asian Companies Eyeing U.S. Listings in 2026」(2026年2月)

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執筆者:森 大輔(公認会計士・公認不正検査士)

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