Nasdaq Stock Market LLC(ナスダック)において、今年9月に上場要件および継続上場基準の厳格化が提案されました。主な変更提案内容は下記のとおりです。
最低 Public Float(一般に流通可能な株式時価総額)の引上げ
今まで、例えば「ネットインカム・スタンダード(純利益基準)」で上場を目指す場合、例えばCapital Market区分では約US$5 millionのPublic Floatが要件でした。
提案では、この基準をUS$15 millionに引き上げる案が出ています。
特に中国を主たる営業拠点とする企業については、さらに厳格な「IPO調達額25 millionドル以上」などが盛り込まれています。
継続上場要件違反時の早期停止・上場廃止プロセスの加速
時価総額(Market Value of Listed Securities, MVLS)がUS$5 million未満という一定水準を10営業日超えて維持した場合、従来の猶予期間(例:180日など)を経ずに即停止・上場廃止という案が出ています。
流動性が極めて低い企業や、取引が希薄な企業を対象に、証拠開示・価格発見機能を維持できないと判断される場合の対応強化です。
中国関連企業(主要営業拠点が中国・香港・マカオなど)の特別要件
中国拠点企業には、IPO調達金額の下限をUS$25 million以上とする案などが提示されています。
また、中国関連企業の上場区分の制限(例えば直接上場の制限)なども検討されています。
これは、過去数年、流動性の乏しい銘柄、小規模上場企業において「価格操作」「投機的な急騰・急落」「情報開示の脆弱性」が指摘されており、特に中国拠点企業でその割合が高いとナスダックは示しています。こうした背景から、投資家保護・市場の健全性・価格発見機能維持を目的に、上場基準の門戸を狭める方向にあります
日本企業でNasdaq(ナスダック)への上場を目指す・検討するにあたっては、Public Float の時価要件が上がる可能性があるため、早めに想定ベースを引き上げて計画を立てる必要があります。また、継続上場要件についても、流動性維持・公開株数・時価維持などのモニタリングが重要になります。
東証グロース市場とNasadaqのキャピタル・マーケットは、いずれも新興企業を対象としていますが、東証グロースは「高い成長可能性」を重視しており、新規上場時点での収益性や財政状態を問いません。一方、NASDAQは、少なくとも利益基準の場合、継続事業からの利益実績を明確に要件としています。日本のスタートアップ企業にとっての選択肢は、国内のグロース市場で早期に上場を目指すか、米国市場でより大きな資金調達とグローバルな成長を狙うか、というものになります。後者を選ぶ場合、今回の規制強化は新たなハードルとなります。
Nasdaq(ナスダック)上場をする中で、監査法人対応やIFRSへのコンバージョンなどお悩みの方はお気軽にご相談ください。