四半期開示は日米とも軽くなる?日本の四半期報告書廃止と米国Form 10-S提案
日本:法定開示は半期へ、実務は四半期のまま
日本では2024年4月1日以後に開始する四半期から、金融商品取引法上の四半期報告書(第1・第3四半期)が廃止され、第2四半期は半期報告書(監査人のレビュー付き)に一本化されました。第1・第3四半期の情報は取引所ルールの決算短信に統合され、監査人のレビューは任意です。法定開示の頻度は年2回に減りましたが、投資家向けの四半期開示そのものは残った、というのが日本の姿です。
米国:1970年以来の四半期制度に選択肢
米国では1970年以来、上場企業に四半期報告書(Form 10-Q)が義務付けられてきました。2026年5月5日、SECは一定の発行体がForm 10-Qに代えて新設のForm 10-Sによる半期報告を選択できる規則案を公表しました。半期報告を選択しても、第1・第3四半期の情報を任意に公表することは妨げられません。本稿執筆時点では提案段階であり、適用開始時期は確定していません。
興味深いのは、SEC自身が提案文書で、2014年に四半期報告義務を廃止した英国では、その後も四半期の決算リリースをやめた企業が1割に満たなかったという調査を引用している点です。法定義務がなくなっても、投資家とアナリストの期待が四半期開示を支える構造は、日本の経験とも一致します。
Nasdaq上場の日本企業にとっての意味
FPI(外国民間発行体)である日本企業は、もともとForm 10-Qの提出義務がなく、Form 20-F/6-Kを用いる別の開示体系にあります。Nasdaq Rule 5250(c)(2)に基づく半期財務情報の提出もあるため、Form 10-S提案そのものの直接的な影響は限定的です。ただし、東証との二重上場企業では日本で公表した決算情報がForm 6-Kの提出対象となり得るなど、実務上は四半期単位の情報発信が続くケースがあります。
一方、米国法人を上場主体としてForm 10-K/10-Q体系を採る会社には、この提案が最終化された場合、半期報告を選択する余地が生じます。つまり、日本企業でも「FPIとして上場するか」「米国国内発行体となる持株会社を上場させるか」で制度の影響が大きく異なります。
開示の「軽量化」は日米共通のトレンドですが、法定義務の減少と投資家の期待は別物です。制度の変化に合わせて開示頻度を減らすかどうかは、コストではなく、自社の投資家がどの頻度の情報を前提に株価を形成しているかで判断すべきテーマだと考えます。
FPI企業への適用・影響
【直接的な影響は限定的】FPIはもともとForm 10-Qの対象外で、Form 20-F/6-Kによる開示体系を利用します。そのためForm 10-S提案の直接効果は小さい一方、Nasdaqの半期財務情報要件や日本で公表した情報のForm 6-K提出は引き続き重要です。
参考:金融商品取引法等の一部を改正する法律(2023年11月成立、2024年4月施行)、SEC Release 33-11414(2026年5月5日)、Nasdaq Listing Rule 5250(c)(2)、A&O Shearman「SEC proposes optional semiannual reporting」(2026年6月)
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執筆者:森 大輔(公認会計士・公認不正検査士)
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